こんにちは。構造計画研究所の山崎です。
マーケティング・サイエンスは意思決定の発想を豊かにすること、またその精度向上において、強力な武器になります。
そこで、今後数回のコラムでは、これまでマーケティング・サイエンスには接点がなかった方がマーケティング・サイエンスに取り組む際に参考となる情報(最低限必要となる知識や参考書籍など)を紹介していきたいと思います。
マーケティング・サイエンスには興味があったけれどもきっかけがなかったという人も、ぜひこの機会にマーケティング・サイエンスに取り組んで頂ければと思います。
●マーケティング・サイエンスとは?
マーケティング・サイエンスとはどのような学問なのでしょうか?
書籍『マーケティング・サイエンス入門』では、マーケティング・サイエンスを下記のように定義しています。
マーケティングに関するマネジリアルな意思決定の発想を豊かにすると同時にその精度を上げるために、
客観的なデータと論理に基づいて市場を捉えるための基本的な考え方や具体的な方法を探究するもの
(古川・守口・阿部(2003)『マーケティング・サイエンス入門』)
では具体的に、マーケティング・サイエンスでは、どのようなアプローチが用いられるのでしょうか。
以下では、マーケティング・サイエンスでよく用いられるアプローチの1つである「モデリング」について紹介したいと思います。
●モデリングとは?
モデリングとは、現象の本質的部分だけを残して簡略化することです。
マーケターが向き合う現実のマーケティングにかかわる諸現象は複雑です。
この複雑な諸現象を、モデリングによってシンプルにし、扱いやすくすることができます。
●モデリングの方法
モデリングの方法には大きく、数式を使うもの・使わないものの2つがあります。
◇数式を使ったモデル
数式を使ったモデルは数理モデルと呼ばれます。
数理モデルを用いるメリットは、対象としている現象の数理的側面を説明しやすいという点です。
例えば下記は、マーケティング・サイエンスにおいて、数理モデルによって表現され、よく用いられている例になります。
・新しい製品カテゴリの普及率
・あるカテゴリに複数製品あるときのブランドごとの選択確率
◇数式を使わないモデル
数式を使わないモデルの例として、情報探索プロセスについて考えてみましょう。
情報探索とは、家族や知人の意見、広告、販売員の推奨などを情報源とし、自分のニーズを満たすモノ・サービスを絞り込むプロセスです。
このプロセスは、一例として、下記のようにモデル化できます。
・情報探索プロセスのモデリング例
「知名集合」の形成→「考慮集合」の形成→「選択集合」の形成→「選択」
上記のモデルによって現実の情報探索のプロセスを完全に説明できるわけではありませんが、現実の本質的な部分をよく説明していると考えれていることから、よく利用されているモデルです。
(購買行動における情報探索の詳しい説明は「第3回 購買行動における情報探索」をご参照ください。)
今回のコラムでは、マーケティング・サイエンスとは何か、そして、マーケティング・サイエンスでよく用いられるモデリングの考え方について紹介しました。
次回のコラムでは、数理モデルの例としてあげた「新しい製品カテゴリの普及モデル(バス・モデル)」について、詳しくみていきたいと思います。