こんにちは。構造計画研究所の山崎です。
前回のコラムではマーケティング・サイエンスとは何か、そして、マーケティング・サイエンスでよく用いられるモデリングの考え方について紹介しました。
今回は、マーケティング・サイエンスのイメージをより掴むために、マーケティング・サイエンスで最も有名なモデルの1つである「バス・モデル」を紹介したいと思います。
●バス・モデルとは?
バス・モデルは、製品市場全体の規模がどのように変化するかをあらわした、バスという人物が提唱したモデルです。
このモデルは、製品が普及していく様子をあらわすため、普及モデルとも呼ばれており、製品カテゴリ全体の需要予測等に用いられています。
●バス・モデルにおける消費者
バス・モデルでは、消費者はイノベーターとイミテーターの2タイプから構成されると仮定します。
イノベーターは周囲の人に影響されずに自発的に購入する人、イミテーターはすでに購入した消費者を模倣して購入する人と定義されます。
ここで、イノベーターの定義が、バス・モデルとロジャースのイノベーション普及理論で異なる点に注意が必要です。
(バス・モデルでは、イノベーターは他者の影響を受けないことによって定義されますが、
ロジャースのイノベーション普及理論では製品の採用時期によって定義されます。)
●バス・モデルの売上モデル式
いま、F(t)をt期の時点までに、すでに購入した消費者が市場規模Nに占める割合とします。
このとき、t期における購入者と未購入者の数は下記のように書くことができます。
イノベーターは、未購入者から、pの割合で発生するとします。
イミテーターは、未購入者から、普及率F(t)に比例する割合qF(t)で発生するとします。(p,qはそれぞれイノベーター係数、イミテーター係数と呼ばれます。)
このとき、t期の売上n(t)は上記の和として、下式のように表現されます。
上式にはp,q,Nという3つの未知パラメータが含まれます。
よって、市場導入前において需要予測を行いたい場合には何らかの方法でこれらのパラメータを設定する必要がありますが、
新製品投入後に数期のデータがあれば、このデータによってパラメータを推定することが可能になります。
●バス・モデルと実際の整合性
では、バス・モデルによる売上予測と実際の売上はどのような関係にあるのでしょうか。
Bassの研究では、アメリカの家庭用エアコンについて、下図の結果が報告されています。
上図をみると、アメリカの家庭用エアコンにおいては、バス・モデルは実際をうまく説明していることがわかります。
ここまでバス・モデルについて詳しくみてきましたが、このモデルを通して、マーケティング・サイエンスのイメージがより具体的に掴めたでしょうか。
マーケティング・サイエンスでは、バス・モデルの他にも有用なモデルがいくつも存在しますので、今後このコラムでもご紹介していきたいと思います。
【参考】
◇古川・守口・阿部(2003)『マーケティング・サイエンス入門』有斐閣アルマ
◇水野(2014)『マーケティングは進化する』同文館出版